海辺に置かれた、さまざまな形・大きさの鏡。
バックの青い海とともに、鏡の中に映る撮影スタッフを紹介するアニエス・ヴァルダ。
彼女の80年に及ぶ人生の心象風景と、製作された作品のカットが交差しながら、美しい色と映像によって映し出される。それが『アニエスの浜辺』だった。
アニエスの斬新な視点から切り取られる風景は、すべてがカラフルでポップで、そして優しさで満ち溢れている。その理由が、徐々に明らかになる。
『(自宅兼オフィスのあるパリの14区にある)ダゲール通りにはなんでもあるの。パン屋、カフェ、美容院、金物屋、自動車学校・・・。ここだけで充分に生活していける。私を愛してくれる人々、私が愛する人々。(Figaro 10/20号)』
"幸せもテーマも身近にある"アニエスのその考えが、1コマ1コマに溢れているのである。
アニエスのファインダーを通せば、日常の中に潜む穏やかで温かい幸せが、見えてくるのかもしれない。
ダゲール通りに作られた2日限りの浜辺オフィス。夢のようなひとコマ。